- 低栄養の時代が長かった日本人は脂肪をためる体質になった
- 体脂肪が増えると脂肪を減らすレプチンが働くのが普通の反応
- 日本人は肥満遺伝子によって脂肪が蓄積されやすくなっている
日本人の食生活が豊かになったのは第二次世界大戦後から10年ほどたった昭和30年ころからのことで、それまでは低栄養の時代が長く続いていた。そのため、エネルギー源となる栄養成分の吸収性を高める作用とともに、吸収したエネルギー源を多く蓄積させ、さらに消費を抑える仕組みが備えられるようになった。
一般には体脂肪の蓄積が多くなると、食欲を抑え、エネルギー消費を進める働きがあるホルモンのレプチンが多く分泌されるようになる。レプチンが正常に分泌され、適切に働いていれば脂肪細胞に脂肪が蓄積されすぎることは起こらないが、レプチンが分泌されても、それに反応するレプチン受容体が働きにくく、食欲が抑えられなくなることがある。
その働きに関わっているのは、肥満遺伝子または倹約遺伝子と呼ばれるβ3アドレナリン受容体遺伝子。β3アドレナリン受容体遺伝子は、運動などによって脳から興奮ホルモンであるアドレナリンが分泌されると、それに反応して体脂肪を分解していく。
しかし、日本人はβ3アドレナリン受容体が反応しにくい遺伝子を持っている人が多いため、内臓脂肪が蓄積されやすく、運動してもやせにくい人が多くなっている。
用語の解説
- 倹約遺伝子
よくある質問
日本人は、どうしてエネルギー消費を進めるレプチンに反応しにくい体質になってしまったのですか?
日本人は歴史的に低栄養の時代が長かったので、エネルギーの消費が少なく、栄養が入ってきたときにはできるだけ蓄えるのが生き残るための重要な体質でした。そのため脂肪が蓄積されたときにレプチンが分泌されても、それに反応しにくいレプチン抵抗性の強い体質になったと考えられています。
今の食生活を長く続けていれば体質は変わっているのではないですか?
体質が変わるまでは長い期間がかかります。比較的変化が早く作られるとされる肝臓の酵素でも、新たな有害物質に的確に反応して処理するものができるのに遺伝で三代かかるといわれます。70年以上はかかる計算です。戦後に生まれた世代の孫になってやっとできるということです。他の体質は変化にもっと長くかかるので、今は変化の途中だといえます。
レプチンの反応をよくする方法はありますか?
レプチンの分泌によってエネルギー消費を進める働きと食欲を抑える働きを、食生活に合わせて反応を低く抑えてきたのが日本人というわけですが、食べすぎの時代ならレプチンへの反応がよくなってもよいような感じがします。しかし、肥満になるほど太った人が増えても、いつ食べられなくなるかわからないために、それに備える体質は残っているので、レプチンの反応をよくする方法はないのが現状です。
運動をしてもやせない遺伝子があるなら運動をしても無駄ですか?
運動をしても脂肪が分解されにくいという遺伝子なので、運動をして脂肪がまったく分解されないわけではありません。分解された脂肪を効果的に燃焼させるには運動が必要です。むしろ運動をして血液中の脂肪を燃焼させて、脂肪の分解を催促するような生活をすることが必要です。
- 監修者
- 内閣府認証 NPO法人日本メディカルダイエット支援機構
- イラスト
- 日暮ろこ子