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【木暮祐一のモバイルウォッチ】第44回 ウェアラブル型デバイス、普及の鍵は?!

さる2月14日に北九州で開催されたウェアラブルセミナーで使用させてもらったVUZIX社製ヘッドマウントディスプレイ
2014年3月7日(金) 19時00分 提供元: RBB TODAY
さる2月14日に北九州で開催されたウェアラブルセミナーで使用させてもらったVUZIX社製ヘッドマウントディスプレイ
さる2月14日に北九州で開催されたウェアラブルセミナーで使用させてもらったVUZIX社製ヘッドマウントディスプレイ
特異な形状はわが国では受け入れられない。携帯電話史を振り返るとメールやブラウジングを実現させるために1998年はこんなテストマーケティング的端末がゴロゴロ。ウェアラブル端末も今はちょうどこの時代の携帯電話にかぶる。
特異な形状はわが国では受け入れられない。携帯電話史を振り返るとメールやブラウジングを実現させるために1998年はこんなテストマーケティング的端末がゴロゴロ。ウェアラブル端末も今はちょうどこの時代の携帯電話にかぶる。
1999年に登場したiモードとEZwebは普通の形状の中にメールとブラウジングを実現。これが一般ユーザーに受け入れられ大成功した。ウェアラブル端末もこの一線を越えられるかが重要。
1999年に登場したiモードとEZwebは普通の形状の中にメールとブラウジングを実現。これが一般ユーザーに受け入れられ大成功した。ウェアラブル端末もこの一線を越えられるかが重要。
曲面有機EL/Tizen OSを搭載したウェアラブル端末「Gear Fit」
曲面有機EL/Tizen OSを搭載したウェアラブル端末「Gear Fit」

 24日から27日まで4日間(現地時間)、スペイン・バルセロナでモバイルデバイス・通信のグローバルイベント「Mobile World Congress 2014」開催されている。スマートフォンをはじめ、様々な電子デバイスや通信機器の新製品、新サービスがお披露目されるイベントだ。同様な国際イベントは毎年1月に米国で開催される「International CES」も有名だが、いずれのイベントでも今年最も注目されているのが「ウェアラブルデバイス」である。

 すでに日本でも様々な機種が発売されるようになったが、メールや着信を知らせてくれたり、活動量やライフログを収集できる腕に装着する各種デバイスが花盛りだ。まずサムスンはGalaxy Gearの新モデル「Gear 2」「Gear 2 Neo」を発表。また、よりリストバンドに近い「Gear Fit」も初披露した。湾曲したSUPER AMOLEDディスプレーを搭載し、Bluetoothでスマホと接続され、歩数、心拍数、睡眠、ストップフォッチ、タイマーのほか、SNSや着信、電子メール、さらにスケジュールなどの通知にも対応するデバイスである。またHuaweiも同社初となるウェアラブルデバイス「TalkBand B1」を発表。1.4インチのフレキシブルOLEDパネル(柔軟性があるパネル)を備えたリストバンド型スマートウォッチで、Bluetoothで対応機種と接続して着信や通知を転送。そのまま耳にかければ通話も可能という。ソニーは同社のスマートフォン・Xperiaと連携する「SmartWear」を発表。「コア」と呼ばれるセンサーをバンドなどで体に装着し、活動量計やライフログを収集できるもので、スマートフォンアプリの「Lifelog」で管理できる。

 Googleが昨年、研究開発プロジェクトとしてメガネ型ウェアラブルデバイス「Google Glass」を発表したが、これに刺激を受けたウェアラブルデバイスも多くなってきた。各国のメーカーが競っているが、変り種では富士通総研がヘッドマウントディスプレイと組み合わせて使用するグローブ型ウェアラブルデバイスを参考出品した。これはNFC(Near Field Communication)タグリーダとジェスチャ入力機能を備え、物に触れるような自然なアクションで作業を中断することなく、作業手順などの情報を表示できるというもの。作業支援分野での活用を模索しているが、なんとも複雑な仕組みだ。

 一方、意外なところからもメガネ型ウェアラブルデバイスの発表があった。「パリミキ」ブランドでメガネ販売店チェーンを展開する三城ホールディングスのグループ会社・ルネットは、iPhoneとBluetooth接続し、メッセージが届くなど新着通知があればメガネのフレームに組み込まれたLEDやスピーカでユーザーに通知して知らせるという「雰囲気メガネ」を発表。現時点ではプロトタイプの段階で、製品化の具体的な予定は今のところない。情報科学芸術大学院大学の赤松正行教授と間チルダ社の共同プロジェクトとして開発が進む。

■普及の鍵はどこにあるのか?

 ウェアラブルコンピュータという概念は新しいものではなく、1980年代から様々な試行錯誤があったが、これまでのものは実用性に乏しく「研究テーマ」の域を出ることができなかった。しかし、持ち歩けるコンピュータともいうべきスマートフォンを誰でもが持ち歩く時代となった今、次世代のスマートフォンの形、あるいはスマートフォンと連携して使う「情報入出力デバイス」としてウェアラブルデバイスが急速に脚光を浴びてきたところなのだろう。

 そんなわけで、今年は「ウェアラブルコンピューティング元年」と言われるほどウェアラブルデバイスの話題に事欠かないが、実はさる2月14日に北九州e-PORT推進協議会および北九州市が主催となって「ウェアラブルコンピュータの最新動向 ~ウェアラブルコンピュータがもたらす新たな市場~」と題したセミナーが開催され、筆者も登壇してきた。他の演者は、ITビジネスアナリストとして著名な伊藤忠テクノソリューションズ株式会社の大元隆志氏と、VUZIX社のヘッドマウントディスプレイを組み合わせたソリューション等を開発している新日鉄住金ソリューションズ株式会社技術本部の笹尾和宏氏。各位がウェアラブルコンピューティングの今後の展望をそれぞれの立場から論じたが、普及の鍵は「ウェアラブルするほどの目的を見出せるか、そしてに普遍的な形であるか」というところで結びの息が合った。

 筆者は、たとえば1998年にセイコーインスルメンツ(SII)が発売した腕時計型携帯情報端末「RuputerPro」はじめ、スマートフォンと組み合わせるBluetoothデバイスを含め様々な市販のウェアラブルデバイスを試してきたが、正直なところ1週間以上継続して利用した端末は皆無に等しい。最大の要因は「充電が面倒くさい」ことだった。充電してでも使い続けた端末は、腕時計型ページャー「ネクストジークス」(NTTドコモ+シチズン、1998年)と腕時計型PHS「wristomo」(NTTドコモ+SII、2003年)ぐらいなものだ。これらはそれ自体がページャーだったりPHSであり、常時電源ONの状態で使わざるを得ないものだからこそ、充電の手間をかけてでも使用し続けた。しかし、携帯電話やスマートフォン等と連携させる通知機能のみのウェアラブルデバイスは、電池切れしても携帯電話やスマートフォン本体で着信できるので、いつしか使わなくなってしまうのである。今後のウェアラブルデバイスは、充電の手間や装着自体の煩わしさをも超える、利用目的(キラーコンテンツ)を備えられるかが重要だ。

 また「普遍的な形」というのは、わが国の場合とくに重視しなくてはいけない点である。わが国ではとかく奇異なものが一般ユーザーには受け入れられない。たとえば音声通話用のBluetoothヘッドセットも、世界では見かけるがわが国では使用している人は稀である。その理由を考えるべきである。北九州の講演で筆者は携帯電話端末のデザインに触れ解説した。携帯電話単体でメールやインターネット(パソコン通信)を実現させるべく、1997~1998年ごろにかけて特異な形状の携帯電話が多数ラインアップされた。当然のことながらこれらの端末は筆者を含む一部のガジェットマニアに受け入れられただけで、一般ユーザーからは敬遠され、静かに消えていった。翌年スタートしたiモードやEZwebの端末では、この1998年の大失敗を踏まえて「普通の携帯電話の形状」にこだわって開発したことで、広く一般ユーザーに浸透していったとされている。ウェアラブルコンピューティング元年と言われるが、現状リリースされているウェアラブル端末のプロトタイプたちは、1998年の特殊形状携帯電話の状況に似ている。これらがもう少し「普通の形状」になったときに、一気に普及が始まるのだろう。

■徹底的に機能を削ぎ落とす勇気も必要

 ウェアラブル端末の機能面では、ウェアラブルだからこそ徹底的に機能を削ぎ落とす勇気も必要だと思っている。かつて、アップルの故スティーブ・ジョブス氏が初めてiPhoneを披露した壇上で、「iPhoneは手のひらで使うからこそ、手のひらで利用する新たなユーザーインターフェイスを考案した」というような話をしていた。確かに、当時のWindows Mobileスマートフォンでは当たり前にあったコピーペースト機能さえiPhoneでは割愛されていた(のちにiOSが多機能化してコピーペーストも搭載、昨今ではジョブス氏も嘆くのではないかというほどデザインや多機能が操作性を台無しにしているが)。ウェアラブル端末ではなおさらのこと、ユーザーインターフェイスに割り切が必要ではないかと考える。

 たとえばメガネ型デバイスの場合だが、これまで市販されてきた一部のヘッドマウントディスプレイも試させていただいたことがあったが、たとえばPCのディスプレイ画面が視線の先に表示されたところで決して見やすいとは思わなかったし、その細かい情報をメガネ上で見て便利とも感じることはなかった。もちろん業務目的で両手で作業をしながらディスプレイを確認するようなニーズもあろうが、日常生活でメガネ型デバイスを使用するとすれば、補助的な情報表示にとどめるぐらいで十分ではないかと感じている。たとえばメールが着信した際に相手のアドレスとタイトルがメガネ上にテロップで流れるとか、ウォークナビゲーションに使うのであれば複雑な地図表示よりも、進むべき方角が矢印で表示されるぐらいのほうが安全であるし使い勝手がいいはずだ。前述の「雰囲気メガネ」はメールの着信をLEDが点灯して通知するぐらいまでシンプルにしてしまったが、じつはこういうウェアラブル端末こそが今後求められてくるのではなかろうか。

 ともあれ、筆者は「普通のユーザー」ではないので、Google Glassほか、今年続々と登場してくるであろうウェアラブル端末をまずは片っ端に試してみたくてワクワクしているところである。

《木暮祐一@RBB TODAY》
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