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むし歯ゼロが当たり前!? フィンランドのむし歯予防の歴史と最新事情

予防歯科先進国フィンランドの子どもたち
2014年6月13日(金) 10時30分
予防歯科先進国フィンランドの子どもたち
予防歯科先進国フィンランドの子どもたち
日本フィンランドむし歯予防研究会理事、日本歯学センター 歯科医師 田北ユキヒロ氏
日本フィンランドむし歯予防研究会理事、日本歯学センター 歯科医師 田北ユキヒロ氏
日本歯科医師会のサイト(歯と口の健康週間のページ)
日本歯科医師会のサイト(歯と口の健康週間のページ)

 6月と聞いて「梅雨」を連想する人は多いと思うが、6月4日~10日が「歯と口の健康週間」だったことを知っている人は、どれくらいいるだろうか。

 歯と口の健康週間(旧名称:歯の衛生週間)がスタートしたのは、今から56年前の1958年。厚生労働省と文部科学省、日本歯科医師会が主体となり、歯と口の健康に関する正しい知識や予防方法などを、より多くの人たちに伝える目的で、毎年実施されている。

 一方、日本から遠く離れたフィンランドでは、キシリトールを活用したむし歯予防を国全体で行い、むし歯予防先進国として知られている。

 なぜ、フィンランドでは、国をあげてむし歯予防に取り組んでいるのか。その理由を知るために、日本フィンランドむし歯予防研究会理事であり、日本歯学センターで歯科医師として活動している、田北ユキヒロ氏にお話を伺った。

――フィンランドの予防歯科を学びながら、日本人の歯の健康を守るための啓発・研究活動を行う「日本フィンランドむし歯予防研究会」理事の、田北先生にお聞きします。フィンランドで、むし歯予防に対する啓発活動が活発になったのは、いつ頃からなのでしょうか?

 フィンランドでは、子どものむし歯が多いことに留意し、1956年に学校歯科保険活動が開始され、むし歯の早期発見に努め始めました。しかし、早期発見・早期治療では、むし歯を減らすことができませんでした。その後、1972年に国民健康法が制定され、“むし歯を積極的に予防する”ことを始めました。

――なぜ、フィンランドでは「むし歯予防」の意識が高いのでしょうか。その理由を教えてください。

 フィンランドは、国民総福祉を目指しているのですが、ある時期、ほとんどの人がむし歯になってしまいました。その頃のフィンランドは豊かな国ではなかったため、国民健康保険でむし歯を治療するための医療費が、莫大になってしまったのです。そこで、むし歯の研究が開始され、むし歯は比較的簡単に、家庭でも予防できる病気だということが判明しました。今から約40年前の1975年、フィンランドでは子どものむし歯の数が一人平均7本だったのですが、その頃の日本では5本。フィンランドの子どもの方が、むし歯が多かったのです。その子ども達の歯科治療を行う保険費用は莫大で、試算してみると、予防に支払うお金の方が、治療に払うお金より大幅に少ないことがわかりました。

――そういった経緯で、むし歯予防の意識が高くなったのですね。では、その当時、どのような活動が実施されたのでしょうか?

 まずは歯科大学を増設し、歯科医師を増やして、フィンランド国民への教育を行いました。むし歯は感染症であること。フッ素やキシリトールで防げる病気であること。そして、歯科医院において、親子での定期検診を実施しました。また、妊娠初期から子どものむし歯を防ぐために母親への教育を始めたり、「金曜日にキャンディーを買って日曜日までに食べ切り、平日は甘いものを我慢する」という、むし歯予防を応援する運動を、政府が行っていました。

――今日のフィンランドは「むし歯予防先進国」と呼ばれているようですが、予防歯科が根付いている最新事例があれば教えてください。

 現在フィンランドの歯科医師の半分以上が、自治体で働く公務員です。これは歯科医師の仕事が、「歯は治療するものではなく予防するものだ」ということで、一般的に根付いたからです。また、現在歯科大学の学生の90%が、予防処置を中心とする女性なのですが、“むし歯が多い子どもは、家で虐待を受けている可能性がある”ということで、調査員が家庭に入ることもあります。それほどフィンランドでは、むし歯予防が成功し、国民の生活に根付いています。

――フィンランドの歯科医師と日本の歯科医師とで、何か違いうところがあるとしたら、どんなことですか?

 日本の多くの歯科医院で、むし歯は「早期発見、早期治療がベストだ」と、いまだに考えられています。実は、フィンランドでも40年前はそうでした。ところが、検査の結果を集計してみると早期発見、早期治療を行っても、子どものむし歯は減るどころか、増えていく一方だったのです。現在、日本の歯科界では、ようやく歯科医院でむし歯を予防する、という認識が増えています。しかし、「治療をしないでむし歯をなくしてしまった国がある」ということを肌で感じ、実践しておられる歯科医院は、治療中心に発達した日本の歯科界では、まだまだ少数だと私には感じられます。

――最後になりますが、フィンランドの歯科医師の役割や、むし歯の人の割合などを教えてください。

 現在フィンランドでは、一般歯科医師の仕事はあまりなく、歯の矯正やメインテナンスを行うのが主な仕事です。また、現在フィンランドの一人平均むし歯の本数は1.2本で、日本の3分の1です。その反面、むし歯ができないので歯を磨かない、という子どもが増えてきて、成人がかかる歯周病に、子どものうちにかかってしまうという、悪い逆転現象が起こっています。このほか、フィンランドのムーラメ市では、10人の子どものうち、1人にしかむし歯がない、ということも起こっています。同じ地球上で、“むし歯がないのが当たり前の社会”が、すでに完成しているのです。

――フィンランドの取り組みを参考にすれば、さまざまな国でむし歯が減少するかもしれませんね。興味深いお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

《ダイエットクラブ編集部》
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