【大学と就職】離職率、低くても安心できない業界の裏側

2014年度上期 グループ連結業績
2014年11月21日(金) 16時00分 提供元: リセマム
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2014年度上期 グループ連結業績
2014年度上期 グループ連結業績
2014年度 主要KPIの計画
2014年度 主要KPIの計画
平成27年3月期第2四半期の連結業績(平成26年4月1日~平成26年9月30日)
平成27年3月期第2四半期の連結業績(平成26年4月1日~平成26年9月30日)
自己都合により退職した若年労働者の有無
自己都合により退職した若年労働者の有無
主要職種別平均年齢、勤続年数、実労働時間数と月額給与額(平成24年)
主要職種別平均年齢、勤続年数、実労働時間数と月額給与額(平成24年)

 昨今、飲食業界を中心に雇用のあり方が議論を呼んでいる。居酒屋チェーンの「和民」などを運営するワタミや、牛丼チェーン「すき家」を運営するゼンショーホールディングスが、雇用実態を巡る議論から店舗の大量閉鎖に至ったニュースは記憶に新しいだろう。

◆「すき家」店舗閉鎖などの影響で22億もの純損失を計上

 11月13日、ゼンショーホールディングスの第2四半期の決算短信がリリースされた。それによれば、営業利益は11億7,200万円となったものの(第1四半期段階では、9億2,300万円の赤字)、純利益では22億3,100万円の損失となった。原材料や人件費などのコスト増、加えて人手不足による店舗閉鎖に伴う損失や、深夜の「ワンオペ」(店舗に1人で勤務すること)解消に伴う深夜営業休止が大きく影響した結果だろう。

 ワタミも2014年度上期の実績は、41億1,000万円の最終赤字。国内外食事業は上期だけで52店舗が撤退、年間の撤退数は102店舗に上る見込みとなった(当初の予定は60店舗)。

 もちろん両社の苦境は、ワンオペや雇用にまつわるニュースだけが原因ではない。だが、それが大きな影響を及ぼしたのは、決算の大幅な修正内容から見ても明らかだろう。

◆飲食サービス業は、実は若手が辞めない業界?

 こうしたニュースが世間を騒がせたためか、飲食サービス業界全体に対して雇用を巡る風当たりが強まっている。たとえば「飲食業は離職率が高いから危険」という言葉を聴いたことがある人も多いのではないか。

 実際、飲食サービス業の離職率は確かに高い。厚生労働省の発表した「平成25年若年者雇用実態調査の概況」によれば、過去1年のうちに退職した若年労働者(満15~34歳の労働者)の退職が多かった業界は、以下の通りである。

1. 宿泊業、飲食サービス業:58.4%
2. 生活関連サービス業、娯楽業:52.3%
3. 情報通信業:52.2%
4. 卸売業、小売業:45.2%
5. 医療、福祉:42.4%
(※自己都合退職者の割合)

 だが、これは雇用形態に関わらず集計したデータである。このうち、正社員の退職者が多かった業界で並べ直すと次のようになる。

1. 情報通信業:45.2%
2. 建設業:34.1%
3. 製造業:32.5%
4. 生活関連サービス業、娯楽業:32.1%
5. 学術研究、専門・技術サービス業:29.5%

 ちなみに「宿泊業、飲食サービス業」は、わずか18.0%。これは全体16産業のうち、下から数えて4番目の低さである。つまり、この業界はアルバイトやパートなど、正社員以外の若年労働者の退職が圧倒的に多いのである。

 もともと飲食サービス業は、高校生や大学生のアルバイトの定番でもあるため若い人が集まりやすい。彼らのほとんどは長く働くことがないため、必然的に「正社員以外の若年労働者」の退職率が高くなっているのだろう。正社員だけで見れば、ほかの業界よりも数値の上では健全である。

◆離職率が低い業界の特徴は?

 ところで、正社員の離職率が低い業界は、なぜ低い値に落ち着いているのだろうか。ここで低い業界の上位5つを抜き出してみよう。

1. 電気・ガス・熱供給・水道業(11.9%)
2. 教育・学習支援業(16.2%)
3. 鉱業・採石業、砂利採取業(17.6%)
4. 宿泊業、飲食サービス業(18.0%)
4. 複合サービス業(18.0%)

 トップの「電気・ガス・熱供給・水道業」は想像に難くないだろう。インフラは絶対になくならない産業であるため、産業として限りなく安泰に近い。そのため、もともと安定志向の人が志望する傾向の業界であり、離職率が低いのもうなずける。

 また、3位の「鉱業・採石業、砂利採取業」は若い人にとってなじみが薄く、就職活動でも残念ながら人気業界とは言い難い。逆に言えば、それでも志望する人、つまりもともと強い興味がある人しか進まないため、大半の人が望んだ就職だろう。それゆえに入社後の後悔や不満も少なく、離職率も低くなったのだと思われる。

 では、2位の「教育・学習支援業」や、4位の「宿泊業、飲食サービス業」などはどうだろうか。離職率が低いということは、皆がストレスを感じることなく、日々の仕事に満足しているのだろうか。実は意外にそうとも言えない。たとえば、教育産業を例としよう。塾や予備校などを考えてみてもらいたい。

◆不安や不満があっても「辞められない」業界特有の理由がある

 塾や予備校で身につくスキルは、いわゆる民間企業とはかなり異なる。たとえば講師職の仕事は教師に近いため、メーカーや銀行などのビジネスパーソンが身につける知識やスキルはなかなか磨けない。そのため、仮に転職活動をしても同じ業界内、つまり競合に移ることが多い。

 そうした業界では、入社したばかりの若手正社員も、割と早いうちから「ほかの業界で活きるスキルや知識が身につかないことへの不安」に悩まされやすい。早期に退職して、第二新卒枠で別業界への転身を図る人も多い。

 逆に、数年働くと「これ以外の業界でやっていく自信がない」という思いが芽生え始め、なかなか辞めづらくなり、そのまま勤務し続ける傾向にある(もちろん、教育に熱い思いを抱き、ずっと勤め上げる人もたくさんいる)。

 総務省統計局の「主要職種別平均年齢、勤続年数、実労働時間数と月間給与額」によれば、「個人教師、塾・予備校講師」の平均勤続年数は5.8年(女性のみ)とかなり短い。先の離職率と合わせて考えると、辞める人は2~3年の早期で辞め、勤める人はとことん長く働く二極化の状況にあると考えられる。

 離職率が低いからといって、その業界で誰もが満足しているとは限らない。データは業界や企業を知る上で有効なものだが、一面的に見ているだけでは不十分だ。必ず業界の生の情報や、ほかのデータなども交え、広い視野を持って調べることが必要である。

<大学と就職連載>
 就職活動を行う学生を取り巻く状況は、当然のことながら、常に変化している。就活生のお子様を持つ保護者世代が学生だった頃と比べると、その変化は大きい。連載では、就活生と日々接しているキャリアスタッフが、大学や就職にまつわるデータを参考にしつつ、今の学生の就職事情について紹介していく。

<著者紹介>高嶌悠人(キャリアコンサルタント)
 慶應義塾大学法学部政治学科卒。株式会社電通を経て、教育系ベンチャー企業の株式会社ガクーに入社。そこでは新卒学生を対象とした就職活動支援スクールの運営に携わってきた。現在は独立し、高校や大学、塾、予備校などでキャリアをテーマとしたセミナーなどを開催したり、メディアにてキャリアに関するコラムなどを書いたりしながら情報発信している。著書に、「人気NO.1「内定塾」が教える エントリーシート 履歴書の書き方(高橋書店)」や、「これだけ覚える!一般常識&最新時事(高橋書店)」、「人気NO.1「内定塾」が教える!今までなかったエントリーシート 履歴書の文章講座」などがある。

《高嶌悠人@リセマム》

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