5月も半ばを過ぎた今日。梅雨や夏を前にして、都心では26度を超す暑い日もあることから、「かき氷」や「アイスクリーム」といった、冷たくて甘いスイーツを欲している人も少なくないだろう。
甘いものを食べるとき、特に大切になってくるのは“むし歯のない健康な歯”を維持していること。むし歯があると、せっかくの嗜好品が、苦痛の引き金になってしまうこともある。
甘美な食べ物の敵ともいえる“むし歯”の予防に「キシリトール」を薦めている、フィンランド トゥルク大学名誉教授のカウコ・マキネン氏によれば、乳幼児期からキシリトールを使ってむし歯予防を行い、正しい歯の磨き方を実践することが大切なのだという。
マキネン氏は、1975年にキシリトールのう蝕(むし歯)予防効果を発見した人物。乳幼児期からのむし歯予防を重要視している理由を、マキネン氏に聞いてみたところ、以下のような答えが返ってきた。
「乳幼児のむし歯は、同じスプーンを共有してものを与えたり、噛み与えをする際に、周りの大人から“だ液”を通じて感染し、そのまま口腔内に繁殖して、発症してしまうケースが多いと考えられています。フィンランドをはじめ北欧では、生涯の口内環境は乳幼児期に決まるもの、と捉えられており、乳幼児期に行う『超初期予防』が重要視されているのです。むし歯の原因となるミュータンスの母子伝播(でんぱ)の危険性がもっとも高いのが、歯の生える前の乳幼児期とされ、その時期のことを『感染の窓』といいます」
また、マキネン氏は、キシリトール研究の第一人者として、乳幼児期のむし歯予防効果を長期にわたって検証し、2013年8月には国際的な歯科専門メディア「International Dental Journal」に新たな論文を発表している。
論文の概要は、生後約6か月~8か月の乳幼児を対象に、3歳になるまでキシリトールの液体を全ての乳歯に継続的に塗布し、その子どもたちが7歳になるまで、むし歯予防効果を追跡検証するというもの。(キシリトール群:313名、対照群:138名/期間:2002年~2011年)
調査の結果、初めのむし歯発生時期の比較で、キシリトール使用群は3歳から、対照群は2歳からむし歯が発生しており、キシリトールの使用でむし歯の発生時期が遅くなったことがわかったという。さらに、その子どもたちが7歳になったとき、キシリトール使用群は、対照群に対して、むし歯の数が大幅に減少。この結果から、乳幼児に対するキシリトールのむし歯予防効果が実証されたとしている。
なお、マキネン氏は、キシリトールのメカニズムを研究する生化学者として、現在でもフィンランド国内外で、キシリトールに関する調査研究に取り組んでいる。
出典:「International Dentall Journal 2013;63:210-224」
(Topical xylitol administration by parents for the promotion of oral health in infants: a caries prevention experiment at a Finnish Public Health Centre)
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