成人からでも予防できる! 「現代人の食生活」を意識した“むし歯予防”のポイントとは?

フィンランドの幼稚園でキシリトール入りのガムを配布しているところ
6月は、高温多湿な時期。湿気や暑さを和らげるために、冷たくて甘いスイーツやドリンクなどに手を伸ばしがちだが、中には“むし歯”が原因で、断念している人もいるのではないだろうか。

日本フィンランドむし歯予防研究会によれば、現代人は「再石灰化(歯のエナメル質を修復する働き)」のサイクルが乱れており、むし歯になりやすい状態らしい。その理由は、現代人が朝食を食べていなかったり、夕食の開始時間が遅いことで、“唾液の分泌が十分に行われていない”ことだと、同研究会は指摘している。

厚生労働省が発表している「平成24年国民健康・栄養調査」の朝食の欠食率年次推移を見てみたところ、前年に比べて男性は12.8%、女性は9.0%だった。これは、朝食を食べていない人が増加傾向にあり、現代人の食事回数が減っていることを意味する。

食事の回数と唾液分泌の関係はわかったが、「食事のスタイル」や「歯磨き」などの視点で、日常的に行えるむし歯予防のポイントも知っておきたい。そこで、日本歯学センターで歯科医師として活動している田北ユキヒロ氏に、現代人の食生活や、成人からでも行えるむし歯予防について、質問を投げかけてみた。

――「現代人の食生活」という視点で、むし歯になりやすい原因を教えてください。

現代人は、糖分の多い食事を大量に摂っています。また、私たちが外食する食べ物のほとんどに、味付けのための糖分が添加されています。糖分はむし歯菌の大好物ですから、外食の多い方は、むし歯になりやすいと言えます。そして、おやつや間食もむし歯につながります。食事を摂ると、食べ物とむし歯菌によって口の中が酸性に傾き、歯の表面が溶け始めて、むし歯になりやすくなります。食事をしてから2時間くらい経つと唾液の力で口の中は中性に戻るのですが、おやつやジュースなど、糖分の多い間食を摂ると、口の中は再び酸性に戻ってしまうのです。外食と間食、この二つがむし歯になりやすい食生活の大きな原因です。

――先ほど、おやつやジュースとおっしゃいましたが、やはり「甘いもの」はむし歯に繋がりますか?

甘いもの、糖分の多いものはむし歯菌の働きを活発にし、むし歯ができやすい口内環境を作ります。また、甘いものが歯の表面にくっついたり、歯の間に挟まったりするのも、むし歯ができやすくなる原因の一つです。つまり、甘いものが長時間、口の中に留まると、むし歯になりやすくなるのです。甘くてベタつくお菓子などは要注意です。

――むし歯予防の基本として「歯磨き」がありますが、外出先で昼食を摂ったときや時間がないときは、歯磨きをできない場合もあります。それでもやはり、毎食後「歯磨き」をしたほうがよいのでしょうか?

歯の状態にもよりますが、90%以上の人は、食べてすぐに歯を磨くことを、私はお薦めします。理由としては、口の中に残った食べ物が、むし歯菌や歯周病菌を活性化させ、生活習慣病の原因になるからです。また、臭いの強い食べ物を食べたときも、歯磨きは口臭予防として効果的です。軽くでもよいので、歯磨きのできる時間があれば、食後に歯磨きを行うことを私はお薦めします。

――むし歯予防に「キシリトール」がよいという話を聞くこともあるのですが、キシリトールの摂取が歯磨きの代替手段になりえるのか、気になります。チョコレートや甘いものの食べカスが口内に多く残っていても、キシリトールだけで効果があるのでしょうか?

はい、キシリトールの摂取は、むし歯予防に効果的です。歯を磨けなくてもキシリトールガムを噛むことにより、口の中に残った食べ物を洗い流してくれる唾液が増えます。また、唾液により口の中が中性に戻りやすくなり、歯の表面が溶けるのを防いでくれます。さらに、水やお茶などのうがいも併用すると、より効果的ですね。

――最後になりますが、生活習慣の視点で、特にむし歯予防のために気をつけるべき点があれば、教えてください。

生まれたときから、むし歯がある人はいません。むし歯は防ぐことができる生活習慣病です。他国の話になりますが、フィンランドでは40年前、子どものむし歯数が日本の子どもより多く、一人平均7本でした。現代の日本の子どものむし歯数は一人平均で3.6本なのですが、フィンランドは国全体でむし歯予防に取り組んだ結果、今では一人平均1.2本となり、日本の子どものむし歯数と比べると、3分の1しかありません。ぜひ、みなさんもむし歯予防として、「食後の歯磨き」「歯を硬くするフッ素入り歯磨き粉の使用」「歯医者さんでの定期的なプロフェッショナルクリーニング」の三つに、フィンランド生まれの「キシリトール習慣」を加えて下さい。

――食生活の見直しや、歯磨きに対する意識づけが重要なのですね。ありがとうございました。
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